case1:束縛のひどい彼…

「彼は私が好きなことをすると、束縛するようになったんです。自分がやりたいからスノ
ポに行くだけなのに、ほかの男と行くのかって言うようになったり……。だんだん息苦し
くなって、いっしょの空間にいると一人になりたいと思ったりしました。それでも半年近
くはいっしょに暮らしたかな。ある程度覚悟の上で暮らし始めたわけだから、すぐにやめ
ようとは思わなかった。

でも、今考えると、そのときは束縛されることでイライラしていたわけじゃなくて、自
分がやりたいことが見つからなくて苛立っていたんだと思います。自分では彼に遠慮して
何もできないんだって、彼が自由にしてくれればできるんだって彼のせいにしてたけど、
私がさっさとやり始めればすむことだったんだなって……」

その彼とは五ヵ月ほど暮らして別れた。一人になったが、仕事面では、一生やっていこ
うというものが見つかった時期でもあった。

「オーラソーマという、カラー液体の入ったボトルを使ったセラピーのようなものなんで
すが、カウンセラーが何かを教えるということではなくて、結局はその人がその人自身の
問題と向き合って、自分でそれをクリアしていくんです。私自身もそれまでの辛い時間が

あったから、そういう形で人を癒していければと思った。この仕事をするためにこれまで
苦しいこと、辛いこと、いろんなことを経験してきたんだなって思えたんです」

一方哲さんのほうも、一度は違う仕事をしようとしたが、やっぱり音楽をやりたいと、
一十九歳で再び音楽活動を再開したころだった。そして、出会うべくして、二人は出会う
ことになる。
もともと本山さんは、昔から結婚したいと思ったことはなかったのだそうだ。
「ウチは嫁、姑の中が悪くて、小さいころから母が祖母にいじめられたりしてるのを見て
育ったから、みんながお嫁さんになりたいって言ってるころも、私はそう思わなかった。
結婚Ⅱ不自由になることってイメージがあったんです。二十五歳で同棲したときも、男の
人とつき合うと不自由になるって感覚だったし……。
でも、私にとって今彼との結婚は、やりたいこと、気持ちいいことがどんどん拡大して
いくことで、不自由になることは何もないんです。だから、別にとりたてて結婚したいっ
て意識があったわけではなくて、あとでついてきたものって感じです。私にとっては流れ
の中に自然に結婚があっただけ。だから、ダメだったら別れてもいい。戸籍にバツがつい
ても私は私だから……って」
哲さんにとっては、結婚相手は「一番強い味方」で、籍は「安心」だという。
「どの道二人では死ねないわけだけど、彼女は自分が生きる上で、ホッとさせられるとか、
行動だけじゃなく気持ちの面で一番フォローしてくれる存在だと思う。もちろん、二人が
同意の上でやばかったら、いつでも別れればいいんだけど、でも今を一○○%にするため
には籍が入ってると、たわいない誤解とかで生まれたくだらない心のゆらぎをなくしてく
れるような気がする。一人でいたときには、かまえたり、ポーズ作って人と対面してたの
に、二人でいると、自然でいられるんだよね」
本山さんは、彼の出現によって親との関係も変わったという。
「あるとき、私が母と電話して、いつものようにウソをついて本当の自分を隠しているの
を彼に見られちゃったんです。そしたら、〃やっと自分の生き方をつかんでこれからやっ
ていこうって時期なのに、両親との関係は何もできていないじゃないか〃って指摘されて、
もうすぐにでも九州に会いに行こうって言われたんですよ。もう、私にしたら、結婚前に
いっしょに暮らしてるってことだって、絶対言えないようなことなのに、どうしようと思
って……。